「子供に怒ってもきかない」を、ドッグトレーニングで解決する

ドッグトレーニング

犬が好きすぎて、ドッグトレーニングを学び、細々と、5年間で100件ほど、飼い主さんに犬のトレーニングの指導をしてきた。

子供ができてから、周りの母親たちと話したり、周りの親子の姿を見ているとドッグトレーニングのと同じ内容の悩みをかかえているケースが非常に多い。
はしゃぐ・暴れるの破壊行動、奇声(無駄吠え)、攻撃性、反抗、言うことを聞かない…

家庭内にいて、エネルギーの有り余っている生き物のする事はたいてい一緒で、犬も子供も、数が増えるだけコントロールが難しくなってくるし、喧嘩・興奮の伝播など、問題のバラエティーも増えてくる。

吠えている犬を一発で黙らせたり、おすわりを教えたり、の部分は知識とテクニックなのだけれど、子供でも犬でも、問題行動は親(飼い主)の責任の部分が多い。
全ての問題は、

「見ていない」
「伝わっていない」

この2つの問題にほぼ集約される。

ドッグトレーニングと子育ての共通点

ドッグトレーニングは、イメージから誤解されることが多いのだけれども、警察犬のようにビシッと犬が人間の命令を聞くようなものではない。危険なく散歩して、家の中で飼い主とリラックスしてゴロゴロするためのものだ。
外出時のコントロールが利かなかったり、家の中で暴力行動を取ったり、暴れたり、物を壊したり。そんな生き物と一緒にいては安心できないし、やたら命令をしてくる上司みたいな人間が家の中にいるのも疲れる。ブラブラ散歩して、ソファーで一緒にテレビを見ながらおやつを分け合える関係性を作ることが私の目指す「犬と人間の良い関係」だと思っている。そして、これは子供と親の関係でも同じだと思っている。

犬をトレーニングする主な目的は「危険回避」だ。

犬は人間ほど、危険予測が出来ないし、好奇心が強いので衝動的に行動してしまうことも多い。なおかつ、警戒心や攻撃性も強い。
食べ物でないものを食べてしまっての開腹手術は未だに獣医師の手術件数のランキング上位だし、ブドウやタマネギなど、人間には無害でも犬は食べてはいけない食材もある。離れてしまった犬、逃げ出してしまった犬が交通事故に遭う確率は非常に高いし、人気の犬種ならばそのまま誰かが拾って飼ってしまって戻ってこないケースも多い。

この、「犬」を「子供」に置き換えても、内容は同じはず。誤飲事故、アレルギー、飛び出しによる交通事故、誘拐…。
犬と子供を一緒にするなと言われるかもしれないけれど、「大事な存在の命を守る」と、いうコンセプトは変わらないはずだ。そして、言葉がいつでも正確に通じるわけではない相手に危険回避の指示を与える事においては、犬を扱った経験値から手数は多いので、参考になればと思う。

目的は危険回避

子供でも、犬でも、必ずできるようになっておかなければならないのは、主に「危険な行動を止める」「呼び戻し」。この2つだ。大前提として、口に入れてはいけないものを手の届く場所には置いておかない、絶対に逃さない、の2つは普段から工夫をして心がけていなければならない。

「危険な行動を止める」に、関しては、プロと一般の方の大きな違いは、タイミングだ。厳密に言うと、「危険な行動をする直前に止める」から、危険な行動を止められるわけで、危険な行動をしてしまってから止めたとしても後の祭りだ。誤飲も、口にしてから大騒ぎするので、子供も犬も慌てて飲み込んでしまうのだ。食べたらいけないものを「じっと見ている」タイミングくらいで、静かに「ちょっと、、、」と、声をかけないと、未然に事故を防ぐことはできない。
この「未然に防ぐ」のを、難しいという人も多かったけれども、そう言う親や飼い主さんを見てわかったことは、「観察」が圧倒的に足りないという事だ。

例えば、飼い主さんは私とのおしゃべりに夢中になっている時、私はチラチラと視線を犬や子どもに送っている。複数いる場合は、複数の子供を代わるがわる見ているが、その人の視線は私、目の前の食べ物、スマホ。子供や犬の方は音がしない限り見ない。
しかし逆に、音がしないときの方が「悪いことをしている」確率が高いので、私は、静かにしている時、頭を下げて地面検索モードの時、はしゃいでいる時、この3つは会話の途中であっても視線を子供や犬の方に向けている。そうすると、机の角に頭を強打する5秒前の子供や、盗み食い3秒前の犬が目に入り、行動を制止することができる。声をかけることで、意識をこちらに向けてもらうのだ。

一番良いのは自分の目が届きにくい状態の時は隣に大人しく座っていてもらうこと。私は、友人や仕事仲間に快適に過ごしてもらう為に、「一緒にティータイムを楽しむこと」を子供にも犬にも教えている。みんなと語らって食べ物を分け合う事は素晴らしい事なんだ、楽しいんだと理解していたら、たいていの来客は事件・事故なく過ごせる。

子供・犬が言うことをきかない理由

「そんなこと言っても、うちの子言うこときかないんです〜」と、言う人には必ず共通点がある。語尾を伸ばして、笑いながらこのセリフを言うのである。
真剣に「ダメだ」と、思っていない事は勿論、伝わらない。伝える気がないものは、伝わらないのだ。いつもの声と同じトーンで「もうやめなさぁ〜い!」と、言ってもそれは逆にけしかけているのと同じで、犬も子供も余計にテンションが上がってしまう。「いい子ね〜、もっともっと!」と同義語になっているのだ。

さらに、「もうやめなさぁ〜い」は犬や子供に向けての発言ではなく、周りの人に「私はとりあえず、怒るというノルマは果たしている常識的な人間ですよ」と、言うメッセージのことが多い。
興奮している犬と子供には、言葉が耳に入らない。そして、伝える気のない言葉は伝わらない。こちらの意図(メッセージ)が正確に伝わっていない。もしくは、伝える気がない。さらに、聞こえていない。

これが言う事を聞いてもらえないシンプルな理由。

どうしたら伝わるのか?


言葉にはやはり、言霊があって、言葉のエネルギーがあって、たとえその言葉が短くても、込めるメッセージは意外とキッチリ伝わるものなのだ、と色々なコミュニケーションの場面で実感する。感情的にはならずに、「危ないよ」「それはやめた方がいい」は、確実に伝えられた方がいい。

私は、緊急の注意を促したい時は、低い声で鋭く「あ!」の一言にしている。
「あ!」と言っている人の指先をなんとなく注目してしまう原理で、彼らの注意が逸れる。犬には、NO(ダメ)とCOME(おいで)でとりあえず現場から離して安全を確保する。子供にも近くに来てもらって「その行動を続けていてはいけない理由」を伝える。

最近は、NOを言わない教育法が流行っているけれども、私は子育てでも、犬育てでも、慌てた経験が非常にたくさんある。冷静に、優しくダメよ〜で通用しないことがとても多い。大きな声を出したり、心配のあまり怒ってしまったりも、人間だから、ある。
殴られる、蹴られる、怒鳴られる、だと、また別の問題行動が出てしまうし、問答無用で論外だけれども、「威厳がある=親・飼い主がある程度怖い」というのは大きな抑止力になると思う。いけない事はいけないと、キッパリと伝えた方が良いと、私は思っている。
一番大事なことはいつも私が見守っている、と大事な人たちにしっかりと実感してもらう事だ。

人間の子供は、同じ言葉を介しているけれども、本当にその言葉を自分と同じように理解しているかは分からない。
犬に関しては、全く言葉を口にしなくても通じるときもあるし、逆に言葉で説明しても伝わらない。
理解の仕方、伝わり方は本当に個人・個体ごとに違うので、キッチリ伝わっているかを確認する必要がある。つまり、こちらが伝え方の工夫をする事だ。
子供ならば、分かりやすい例だったり、犬だと、何か美味しご褒美を片手に伝えたり。最終的には、ポジティブなイメージで終われるようにするのが理想的。特に娘には説教くさくなってしまうので、ここは自戒を込めて。

命令や説教を繰り返しすぎると、彼らは心を閉ざす。
正に閉店ガラガラ。コミュニケーションが取れなくなってしまう。一回で理解してもらおうとしない。何度か、折を見て、楽しく伝えるためには、相手の雰囲気を見ながら「引き時」を逃さないことも大切だ

コミュニケーションを定義し直す


小さな子供や、犬とのコミュニケーションを研究することは、最終的には痴呆症のケアや障害のある方たちとのコミュニケーションにもつながってくるのだろうと考えている。
コミュニケーションとは何か、をもう一度自分の中で定義し直す事が最近の私たちには必要だと思う。
インターネットの普及で、好きなものを好きなように理解する習慣がついてしまった私たちは、意図せず相手の気持ちに無頓着だ。「空気を読む」という、大意を掴むところは得意になったいっぽうで、一人一人の気持ち、意図という詳細に無頓着になってしまっている気がする。

私は、言語を介する事を人生の半分以上行っていて、それを生業にしてからももう長いのだけれども、言葉で通じることなんて、伝えたいことのほんの一部に過ぎない。
逆に、黙って相手の手を握るだけで、流れ込んでくるように相手の気持ちがわかるときもある。子供や犬とのコミュニケーションは、この類の「言語」や「非言語」だけでは定義でき要素もあるのではないだろうか。

コミュニケーションで一番大事になってくるのが、相手の尊厳を尊重する事だ。
その上で、自分の伝えたいことをしっかりと意志を持って伝える。適当な言葉ばかりを吐いていたら、その適当な言霊で自分が覆われてしまうように思う。相手に届かない言葉ばかり投げていたら、言霊の浮遊霊みたいなものが自分の周りにたくさんできてしまう気がする。

自分が書いたり喋ったりする言葉が、最終的には自分を取り巻いて、自分を作っていく。
だから、子供や犬に伝える言葉でも、しっかりと相手に届くように設計してから口から発することは大切なのだ。

言葉の無駄遣いをやめれば、相手が誰でもコミュニケーションは上手くいく。

コミュニケーションの真髄はそこだと思う。

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